8月22日、新幹線に乗って東京・渋谷の近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来へ。
久々の東京なので余裕を持って出かけたのに、渋谷で迷ってしまった。予約の時間は11時半から30分間。
近藤医師は写真で想像していたより大柄な人だった。
しゃれたマンションの一室で、クリニックという冷たい感じはない。女性スタッフに案内されて近藤医師の前に座り、「録音していいですか」と聞くと、「もちろん」とのこと。
近藤医師は私が持参した検査データをモニターで確認し、メモを何枚も書きながら説明してくれた。
患者がどれくらい病状を自覚、理解しているか分からないからか、最初はがんの概要の話。本の内容と重複する話が多かったが、だんだん私自身のがんについて、個別具体になっていった。
(※自分の情報とはいえブログに載せていいかどうか不安だったので、近藤誠セカンドオピニオン外来へは事前連絡をして許可を得ています)
転移していないのは、がん細胞に転移能力がないから
以下、話の主な内容です。
「いろんな検査をして転移はなかったようだが、それは検査で見つけられる1センチの転移はなかったということ。1ミリのがんがどこかに潜んでいるかもしれない。そこには100万個のがん細胞がある。そういう転移が体のあちこちにあったら、もう治らない。それを本物のがんという」
「あなたの腫瘍が3センチということは、300億個のがん細胞が詰まっている。1個のがん細胞がこの大きさになるには、5年から10年、もっとかかっているかも。その間、転移していないのは、運がいいというより、がん細胞に転移能力がないから。つまり、がんという名前の良性腫瘍、がんもどき。そのままにしておいても転移しない」
「ただ、あなたがどちらかは分からない。可能性をパーセンテージでいうと、がんもどきが70%、本物が30%」
「(画像を見ながら)はっきりした転移は見られない。これを治療したらどうなるか」
「がんはそこから毒素が出ているわけではない。肺の中でがんが10センチになっても呼吸困難では死なない。肺活量が半分になっても生きていける。片肺を全部と、もう片方の肺を2分の1、全部で4分の3ぐらい取らないと死なない」
「ということからすると、3年5年放っておいても死なないと思う。ただ、手術をすると5年後に生きているのは70%ぐらい(たばこを吸っていたから、もう少し低くなるかも)。なぜかというと、手術を受ける人は大抵抗がん剤も受けるから、その毒性で死ぬ人が多い。また、手術の合併症で死ぬ人もいる(今は少なくなったがゼロではない)」
「手術は再発が多くなるので勧めない。手術をすると、再発が急に出てくるようになる。理由は二つある。まず傷口にがん細胞が集まる、そういうタイプの再発がん。もう一つは、全員ではないが、それぞれの臓器に潜んでいる転移の成長が早くなる。一部は傷口に細胞が集まったり、それぞれの臓器に潜んでいるのが手術をきっかけに急に大きくなる。がんもどきではこういう心配がないが、本物のがんだったら、ほぼ確実に5年以内に死んでしまう」
私のがんは、本物? がんもどき?
私から質問も。
–今の段階で本物のがんか、がんもどきか分からないか。先生の本には分からないとあるが、やはり患者としてはそこを知りたい。
「分からないが、本物のがんだったら治らないから治療しても無意味。がんもどきだったら、放っておいても死なないから、やはり治療は無意味。どちらも治療は無意味、有害ということになる」
–私は手足のしびれ、ばち指の症状がある。これは本物のがんの証拠ではないか。
「たちが悪い可能性がある。本物のがんの可能性が高くなる。ただ、(ばち指は)珍しい。研究があるのか僕は知らない」
–ばち指は、がんを治療したら元に戻ると(ネットに)書いてあったが。
「そうかもしれないが、がんを治療したら早く死ぬ可能性も高くなる。判断が難しい」
–呼吸器内科からは手術を勧められた。リンパ節に転移しているかもしれないと。
「リンパ節の転移は無視していい。しょうがない」
–手術を断って、放射線科を紹介してもらった。
「(腫瘍が)3センチぐらいなので、今ならピンポイント照射が可能。ただ全員が治るわけではない」
–放射線科からは、体幹部定位放射線治療を提案をされたが、副作用がたくさんあると言われた(病状説明書を見せる)。
「放射線をいろんな方向からかけるから、その通り道が焼けて呼吸に使えなくなる可能性もある。脊髄炎は場所的に心配しなくていい」
–定位放射線治療は受けないほうがいいか。
「それは自分で考えてもらわないと。どちらも賭けみたいなところがある。ただ、あなたの症状(ばち指、手足のしびれ)がだんだん辛くなるとすると、治療を受けないほうがいいと言う勇気は僕にはない。しかし逆に受けたほうがいいとも言えない」
続きます。
→「2015年8月-14 近藤誠セカンドオピニオン外来へ行く-2」
→「2015年8月-15 近藤誠セカンドオピニオン外来が終わって」
※「リンパ節の転移は無視していい」について
近藤誠著「がん治療で殺されない七つの秘訣」(文春新書)には、リンパ節郭清(切除すること)に疑問を持つ医者たちが、胃がん、肺がん、乳がんなどでリンパ節を予防的に治療(切除など)する群としない群とを比べる試験を行ったが、他臓器への転移率や生存率は、どちらも同じだった。逆にリンパ節を予防的に治療すると、寿命は延びないで後遺症ばかりが増える、とある。