前日のコメント欄を見た人から、このヒト、ホントに近藤誠セカンドオピニオン外来の回し者じゃないの? と疑われるのではないかと戦々恐々しているクロエです。
さて、8月22日のさらに続き。
近藤誠セカンドオピニオン外来が終わると、昼の12時過ぎ。
久々の東京なので、友人二人と会う約束をしておいた。学生時代からなので、もう30年以上のつきあいになる。仕事や結婚で東京へ出ていったが、彼女たちが名古屋の実家に帰ったとき、近況を報告し合う仲だ。
渋谷のヒカリエで一人と待ち合わせ、そのままもう一人の友人の待つ神楽坂へ。予約を取ってくれていた和食のお店でランチ。
その席で肺がんであることを告白した。これについては、話してよかったのか、話さない方がよかったのか、今もよく分からない。ただ食事がまずくなったことだけは確かだな。二人、ごめん。
たいていの人は、がんの告白にどう対応していいか分からないだろうと思う。そのがんは軽いのか重いのか、治療で治るのか、生存率はどれくらいか、死期が迫っているのか、などなど。
がんについて豊富な知識があるならいざ知らず、そうでなければ滅多な返事はできない。戸惑うことになるんじゃないだろうか。
と思っていたので、「2015年8月-4 (12日-1)ステージ確定」に書いた、国立がん研究センターがん対策情報センターが出している小冊子「肺がん」を見せながら説明した。
「肺がんといっても1期から4期まであって、私はここ、1Bってごく初期だから。東京にはセカンドオピニオンを聞きに来た」
二人は驚いたようだが、恐れていた愁嘆場にはならず、下手な同情も哀れみも寄せられることはなく、同じ立場なら私もそうするだろうという、いつも通りの接し方をしてくれた。ただ心配はしてくれて、その気持ちは嬉しかった。
店を出て神楽坂通りを散策しながら、いろいろ話をした。
もうずいぶん前になるが、嵐の二宮和也が主演したテレビドラマ「拝啓、父上様」の舞台が神楽坂で、趣のある路地が縦横に走る風情のある街並みを一度訪れたいと思っていた。夏休みの週末で人出は多かったが、ずっと歩き続けていたいと思うような街だった。
二人は、三つの検査を受けて、もし末期と診断されたら、死ぬ前に会っておきたかった友人たちなので、顔を見られて胸のつかえが取れたような気分だった。
※国立がん研究センターの「肺がん」は改訂版(第3版、第4版)が出ています。
→「肺がん」改訂版
→改訂で内容がどう変わったか記事にしています。「国立がん研究センターの冊子「肺がん」第3版」「国立がん研究センターの冊子「肺がん」第4版」
カミングアウト失敗談
こちらは9月に入ってからの話。
上に書いた友人の一人が、シルバーウィークに帰省するので、栄(名古屋の繁華街)でお酒でもどうかとお誘いのメール。体調が優れなかったので残念ながら断ったが、そのとき、別の名古屋の知人(P子)も誘うつもりだったというので、
「2人が会ったとき、私の肺がんの話題が出て、話がかみ合わなかったら申し訳ない」と下手に気を回し、P子に電話でカミングアウトしてしまった。P子は、
「えー? えー! えー!」と甲高い声でひとしきり騒いだあげく、
「がんって遺伝するんでしょ? 肺がんなんて、がんの中で一番たちが悪いっていうじゃない」
と、テレビや新聞や友人知人から聞きかじった中途半端な知識をありがたく授けてくれた。
私が近いうちに死ぬと思い込んだようで、「いや、まだ1期で、ばち指っていうの以外、症状もなくて」と説明しても、聞く耳を持たず、一方的にまくしたててくる。
自己嫌悪。わざわざ電話した自分を呪った。できるものなら時間を巻き戻したかった。「ほかの人には言わないで」と口止めしたけど、当てになるかどうか(電話ではなく実際に会って告白していたら、反応は違っていただろうか。いや、もっと大仰なリアクションを取られていたかも)。
P子のような反応というのは、「何か言わないと間がもたない」という気まずさをどうにかしたいという焦りからなのか、「私はその病気についてこんな情報を持ってるから教えてあげる」という親切心からなのか、「あまり深刻に受け止めたら落ち込むかもしれない」という励ましのつもりなのか、あるいはその全部なのか、どうでしょう。
彼女なりに気を使っていたんだと思うけど、それ、違ってるから。かといって、何が正しいのか分からない。
私にとっては、東京の二人の友人や弟のような淡泊な対応が望ましいけど、そんな薄情な(に思える)対応は淋しい、こちらの気持ちに寄り添ってほしいという人もいるだろう。
また、がんだと告白してくれた人にどう対応したらいいのか、これも悩ましい。相手によって対応の仕方を変えるべきだろうけど、その相手がどういう人なのか、正しい判断をする自信はまったくもってない。
物言えば唇寒し、か。もう誰にもカミングアウトしません! 嫌な思いをしたくない。相手にも気を使わせたくない。
と思っていたら、P子の今年(2017年)の年賀状にこんな一言が。
「どうかいつまでもお元気で」
わなわなと震えました。