そういえば、私が通院しているC病院も、サードオピニオンを聞きに行こうとしているE病院も、そして母が入退院を繰り返している病院も(母はがんではないが)、がん拠点病院(がん診療連携拠点病院)だ。特に意識していなかったけど、三つともそうだった。がん拠点病院って結構多いんでしょうか。
がん拠点病院は、全国どこに住んでいても質の高いがん治療を受けられるようにと厚生労働省が指定した病院。全国に約400病院あって、がんの専門的な医療を提供できるかどうか、専門知識を持ったスタッフが揃っているかなどの審査を通った病院が選ばれる。細かいことは厚生労働省のHP「がん診療連携拠点病院等」をどうぞ。
愛知県には26病院あって、内訳は、
・都道府県がん診療連携拠点病院(各都道府県に基本的に1病院ずつ)・・・愛知県がんセンター中央病院
・地域がん診療連携拠点病院・・・18病院(そのうち名古屋市内に10病院)
・ほかに、がん診療拠点病院(これはちょっと特殊で、愛知県知事が独自に指定)・・・7病院
リストはこちら。がん診療連携拠点病院(厚生労働大臣指定)/がん診療拠点病院(愛知県知事指定)一覧
地図を見ると、がん拠点病院はやっぱり名古屋に集中していて、知多半島と渥美半島の先のほうとか奥三河には一つもない。離島ももちろんそうだ。
がん拠点病院は、「日本人の9割が、車で1時間以内に『拠点病院』に行けるようになっている。」(NHK「がんプロジェクト」取材班著「がん患者力」(主婦と生活社)より)そうだが、残りの1割のエリアに分類されて、車も持っていない人はどうなるのか。
人口に比例して設置しているんだろうけど、地下鉄で気軽に通院している自分がいかに恵まれているか、好きに病院選びをして言いたいことを言ってるか。思い上がっているようで、ちょっと恥ずかしくなります。
がん拠点病院だから、先生に任せておけば大丈夫?
といって、がん拠点病院を盲目的に推奨しているわけではありません。
「がん患者力」(これも図書館で8月24日に借りた中の1冊。あとで買い直した)を読むと、がん拠点病院なら全国どこでも均一の高い治療を受けられる、がん拠点病院なんだから医師に任せておけば大丈夫、という話ではないらしい(任せたら、まず間違いなく標準治療に誘導されるでしょうし)。
本ではこんなケースを挙げている。
乳がんの手術後、胸に痛みを感じた60代の女性ががん拠点病院の乳腺外科を受診するが、異常なしの診断。しかし痛みは引かず、別の病院、地元の診療所、再びがん拠点病院の外科、さらに院内紹介で血液内科を受診するも、病名は特定されず、医師は「大したことない」「死なないから大丈夫」と繰り返すばかり。思いあまった女性が別の病院でセカンドオピニオンを聞くと、極めて珍しい悪性リンパ腫だった。進行が早く予後も悪いがんのため、すぐに治療に入ったが、最初のがん拠点病院の医師たちの無責任な診断を信じていたら、命を落としていたはず。
がん拠点病院の医師自身も言っています。(以下、引用は全て「がん患者力」より)
「確かに、『拠点病院』は『数』の上では整備されました。でも、実際に行われている医療の『質』が本当に適切なものかと問われれば、経験上、『必ずしもそうではない』と答えざるを得ません。」
どうしてこんなことが起こるのか。(ここからは取材班の文章)
「『拠点病院』を指定するときチェックされるのは、(略)『必要な設備や人材が揃っているかどうか』という点だ。しかし、『質』については、『適切な医療を提供する』ことを条件に挙げているものの、実際に指定するときに医療の中身がチェックされることもないのだ。(略)そういったチェック体制の不備も、必ずしも適切な医療を提供していない『拠点病院』の存在を生む背景にあるのではないだろうか。」
名前は立派だけど中身が伴っていないということ? 改善策は講じられているのでしょうか。
「改善の兆しが全くないわけではない。実際に『医療の中身を評価する』取り組みも、一部の地域では始まっている。しかし、現状では医療界の抵抗が根強く、全国規模で実施していく仕組みを作る制度改革には大きな壁が立ちはだかっている。」
「『拠点病院』で行われている医療の『質』について評価するすべを、私たちは持っていない─残念だが、この事実を知っておいてほしい。」
病院内のがん相談支援センター
今受けている治療や医師に疑問を持ったら、上に挙げた乳がんの女性や私のように、別の医療機関を訪ねたり、セカンドオピニオンを聞くしかないのだろうか。
いや、灯台下暗し。
がん拠点病院には、がんについてさまざまな相談に乗ってくれる相談支援センター(病院によって、がん相談支援室とか地域医療センターとか名称はさまざま)がある。
相談内容は、どの病院、診療科を受診するべきか、診断や治療、セカンドオピニオンについて、また治療費や保険制度など多岐にわたるようだ。相談に乗ってくれるのは、医療ソーシャルワーカーという専門の職員や、相談内容によっては医師や薬剤師。センターで問題解決が難しい場合は、他の施設や機関へ紹介もしてくれるという。
実は私も一度、がん相談支援センターを利用したことがある。
7月に肺がんが確定した日、C病院の出入り口近くに相談支援センターの名前を見つけて、ついフラフラと入ってしまったのだ。自分で思っていたよりショックが大きかったようで、ちょっと放心状態気味だった気がする。
狭い通路の両側に、資料の詰まった棚や、リーフレットが差されたラックが整然と並んでいた。奥のデスクにスタッフがいるのが見えたので、
「すみません、さっき肺がんと診断されたんですけど、何か肺がんに関する資料ってありませんかね」
するとスタッフはラックを指して、
「そこにあるぐらいしかありませんねぇ」
このファーストインプレッションが悪くて、以降二度と相談支援センターには足を踏み入れていない。
でも、今思うと、私は相談支援センターの使い方を間違っていたのではないかと思う。事前にちゃんと予約を取って、具体的な相談事に乗ってもらっていれば、役に立つ情報が得られていたかもしれない。ピアネットで教えてもらった定位放射線治療の病院別の治療成績の資料も出て来たかも。
実際、役に立ったという人はいるんでしょうか。利用経験者の話を聞いてみたいものです。
初めてがんと診断されたときは、誰でもショックを受けるはず。誰もが、がんビギナーだ。
できるだけ情報を集めて、利用できることは何でも利用するという姿勢は大切だと思う。私みたいに基本的に一人で動いていると、取りこぼしている情報って絶対にあると思うので。