9月14日。E病院放射線科のセカンドオピニオン(私にとってはサードオピニオン)から初診へと転じた外来診療は、10時50分から始まり11時半で終了。テディ先生にお礼を言って診察室を出る(医学生たちの役に立っているといいのだけど)。
検査は午後からなので、病院の近所でランチをすませ、まだ時間があったので、病院内の図書室(?)へ。がん関係の本は少し離れたコーナーにまとめられていて、周囲に気を使わずに探したり読んだりできるスペースが作ってある。常駐のスタッフもいて、いろいろ質問もできそうだ(以後、よく利用させてもらっています)。
午後1時半から血液検査と心電図、呼吸機能検査、胸部CT(立て続けに受けたので、失念している検査があるかも)。そして最後に放射線治療室へ向かい、治療のための固定具(型、シェル)作りに入った。治療を急ぐため、通常より早く準備してもらっていたかもしれない。
リニアック
リニアックを初めて見た。放射線治療室の真ん中に鎮座する、直線加速器という放射線治療装置だ。といっても、素人目にはCTやMRIと同じような巨大な機械にしか見えない(機械オンチです)。
普通の放射線治療は、がんの腫瘍に対して一つの方向(たとえば胸の真上)からしか放射線を当てることができないため、放射線は1日2グレイ程度しか照射できない。一気にたくさん当てると、臓器や皮膚が損傷して、死ぬこともあるらしい。
その点、定位放射線治療は多方向から放射線を当てることができる。胸の正面から1グレイ、横から1グレイ、背中から1グレイ、右斜め上から1グレイ、左斜め下から・・・という具合に分けて照射し、合計のグレイ数を稼ぐことができる。
たとえば治療に48グレイの放射線を当てると計画した場合、普通の放射線治療だと1日2グレイずつ24日かかるのに、定位放射線治療だと1日(たとえば)12グレイずつ当てて4日で終了ということになるわけです。
定位放射線治療は、別室(モニター室?)で技師さんがCT画像を見ながら、腫瘍だけを狙って放射線を照射する。当てている最中に患者が動いたら、健康な臓器に傷が付いてしまうので、患者の体を固定しておく必要がある。ということで、患者ごとに固定具が作られる。オーダーメイドの固定具だ。
固定具の作成
固定具は、細かいビーズ(のようなものか)が入った柔らかいマットの上に患者が腕を上げて横になると、技師さんがマットの空気を抜いてビーズ同士を密着させ、マットが患者の体にぴったりフィットするようにしたもの(だと思う。自分は横になっているので、細かいことはよく分からない)。
固いです。卵の紙パック(プラスチックじゃなくて紙のパック)を大きく、分厚くしたような感じ。肩から腰のあたりまでの長さ。
色は青で、治療室を入ってすぐの通路の壁に、セミの抜け殻のようなヒト型の青い固定具がずらっと並んでいるさまは、ちょっと異様な風景。
以後、治療のたび、治療台にこの固定具をセットし、その中に体を滑り込ませて(固定具は固いので、出入りは結構大変)放射線治療を受けることになる。
胸の3か所に十字を書かれる
固定具を作り終わったら、次は放射線がきちんと腫瘍にピンポイントで当たるように、位置合わせのための印付け。放射線技師さんから胸にマジックで十字の印を付けられる。
私の場合、胸の真ん中と、左右の乳房の下の端、計3か所に黒いマジックで十字の印を書かれた。最初、胸の上の十字が上すぎて、襟ぐりの広いVネックのセーターを着たら見えそうだったので、少し下に書き直してもらう。
「お風呂で洗わないで。タオルでごしごし拭かないようにしてください」
との指示。十字が消えてしまったら、放射線の当たる場所がずれてしまう。気を付けねば。
この十字だが、家に戻って鏡に写してみてギョッとした。目立つ。これでは(予定はないが)温泉には行けそうにない。そしてハッと気付く。手術をした人は、鏡で手術跡を目にするたび、こんな気分を味わっているのだろうか・・・。
放射線技師さんは、若い男性ばかりだった。胸に十字を書かれるとき、上半身は裸になるが、乳頭があらわにならないようにタオルで覆ってくれた。これはその後、実際に治療を受けるときも、どのスタッフも見えないように気を付けてくれた。
放射線治療を行う際のガイドラインなのか、E病院の放射線科の方針なのか分からないが、教育がしっかりしているなと感心した(タオルで胸を隠していたのに、いきなりはぎ取られたという話を聞いたことがある)。
私のような中年でも羞恥心は持ち合わせているので、こういう配慮は本当にありがたい。それに双方(治療スタッフと患者)が余計なことを考えなくていいので、技師さんは治療に専念できるし、患者も治療に積極的に協力できるのではないかと思う。
夕方4時で終了して、この日は帰宅。料金は1万1010円だった。初診と諸々の検査代だと思う。セカンドオピニオンで3万円超を予定していたので、ありがたい。