半年ごとに開催
名古屋市とNPOが運営しているがん患者のためのサポート組織、名古屋市がん相談情報サロン「ピアネット」では、がんの種類別に半年ごとに患者会を開いている。前年10月の肺がんの開催日はちょうど放射線治療の真っ最中だったので、半年後に参加できることを心待ちにしていた。
4月下旬、ようやくその日が訪れた。肺が原発巣の患者さんと会うのは初めてだと思う。少し緊張。
机をロの字型に並べた奥に2人。がんサバイバーでピアサポーターのピア氏が司会進行を、別の男性患者が書記を務める。参加者は空いた席に座っていく。見回すと参加者の7割方は60代以降の男性。
やっぱり肺がんって男性のほうが多いんだ。開催が平日の午前中で、会社勤めの人が来るのは無理だから、リタイアした人に偏るのかな。と、そのときは思ったが、違いました。次に参加したときは女性のほうが多く、年代も幅広かった。あとで聞いたら、回によって男女比も年齢層も異なるそうだ。また、会社勤めの人が有休を取って参加することもあるという。
参加者は、個人で来ている人が大半だが、配偶者同伴の人、患者の代理(家族)で来ている人もいた。代理を寄越した患者さんは、患者会に来るのを楽しみにしていたが、直前になって病状が悪化し、歩けなくなってしまったという。
そうか、患者会に来られる人は、まだ恵まれているのだと思い至る。まだ自分の足で歩けるのだから。同じ肺がん患者に会って情報を得たくても、そのスタートラインにさえ立てない人がいるのだ。
自己紹介と相談したいこと
最初は自己紹介から。名前、年齢(何十代でOK)、仕事、病歴(肺がんの種類、ステージ、どんな治療を受けているか・過去に受けたか、現在の状態など)、ほかの参加者に相談したいことを、一人3分程度で順番に話していく。
これ、事前に要点をまとめておかないと、どんどん話が長くなります。おそらく、普段はがんについて話す機会があまりないので、みんな話したくて仕方ないのだと思う。どの程度まで話せば分かってもらえるか不安で、微に入り細に入り説明してしまうということもある。
話し出したら止まらず10分近く話し続ける高齢者がいたが、多分よくあることなのだろう、ピア氏はうまくまとめて、次の人へと話を振っていた。
参加者の病期は1期から4期までさまざま。細かくは書けませんが、抗がん剤で治療中の人、手術後に再発したが2度目の手術を拒んで通院をやめた人、別のがんの手術後に肺へ転移した人など千差万別だった。
自己紹介が終わると、各人が出した相談したいことがら(疑問、問題点)を、ピア氏が項目ごとにまとめて参加者に問いかける。
実際の肺がんサバイバーでなければ持ち得ない情報の数々を聞けて、とても参考になる。この病院ではこういう治療を積極的にしているとか、あの病院には〇〇の専門医がいるとか、医師に頼みにくいことがあるときはこういう言い方をするといいとか。
ばち指について聞いてみた
別の臓器のがんから肺に転移したという人が抗がん剤について質問していたが、ピア氏は、抗がん剤は最初に腫瘍ができた場所(臓器)によって使う薬が決まるため、肺がんの患者会では情報は得られない、でも参考にはなると思うので聞いていてくださいとアドバイス。原発巣が乳がんなら、肺に転移しても乳がんの抗がん剤を処方され続けるということだ。
なるほど。がん患者の常識かもしれないが、自分が抗がん剤を服用していないので、初めて知った。きっとほかにも知らないことがたくさんあると思う。
患者は自分の受けた治療が一番だと思いがちだ。そのため他人が受けた治療内容や医療機関にケチを付けたくなることがある。怪しげな民間療法を信奉している人もいるかもしれない。
ピア氏は話がそんな方向へ逸れないように、極端に振れそうになったら、うまく手綱を引いて正しい道へ戻していく。さすが。
話を聞いていると、肺がんについて詳しく学んでいる人がいれば、自分では全く調べることなく楽観的に構えている人、医師の言うがまま唯々諾々と治療を受けている人もいる。
私自身は、ばち指について相談したが、参加者の中に経験者はいなかった。一人、爪が肉に食い込んで痛いという似た症状を話してくれた人がいたが、別の人がそれはイレッサの副作用だろうと指摘。でも、少しでも役に立てばという気持ちからの発言は嬉しかった。
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