今朝、朝刊(中日新聞)を広げたら、こんな見出しが目に飛び込んできた。
「病院別5年生存率初公表」「がん医療の透明性確保を」「特徴知り、受診の参考に」
そんなデータが出たんだと思ってよく見ると、先月8月に国立がん研究センターが発表したデータ(「がん診療連携拠点病院院内がん登録生存率集計報告書」)の中から、中部地方の数字をまとめたものだった。
高い生存率のからくり
まず気になったのは、愛知県の肺がんの5年生存率。
愛知県がんセンター中央病院が58.3%とダントツで高い。
あーあ、この数字を見て、やっぱりがんセンターはすごい、ここで治療を受けたいと思う人が増えるんだろうなと長嘆息してしまった。
新聞には1期と4期の患者数が出ているが、ほとんどの病院が4期のほうが1期より患者数が多いのに、がんセンターは逆。つまり回復が見込めない患者はよそへ送っているんじゃないの(ほかの病院とかホスピスとかに)、予後のいい患者ばかりいれば生存率が高いのも当たり前だよね、とひねくれ者の私は思ったのでありました。
私も最初に受診したC病院で強く手術を勧められたが、その後、肺がんを見つけてもらった近所のクリニックの医師にそのことを話したら、「これぐらい(ステージ1B)なら切りやすいからね」と言われたことを思いだした。私もあやうくデータに還元されるところでありました。(→「2016年5月〜6月 ハイキング&市の定期健診」)
自分が通院中の病院は?
オリジナルの資料を見ると、国立病院機構名古屋医療センターは、データを提出する際こんなコメントを寄せている。
「がんの種類別に全体の生存率が公表されています。生存率は,進行がんの患者さんが多ければ低くなりますので,多くの進行がんを診ている施設ほど,成績が悪いかのような印象を与えてしまいます。次回からは,病期別のデータの公表を望みます。」
名古屋医療センターの肺がんの5年生存率は、愛知県がんセンターに比べて半分以下。数字だけで判断されたらたまらないはず。極めて真っ当な要望ですよね。
患者としては、さらに治療別の数字も知りたいところ。手術、抗がん剤、放射線、あるいは複数の治療を組み合わせた場合など、生存率にどれくらいの違いが出てくるものなのか。
新聞の表で、次に気になったのは、自分の通院している病院のデータ。しかし載っていなかった。患者の5年後の生死を90%以上把握していないと集計対象にならないそうで、愛知県内の大学病院はことごとく載っていない。
何かすごく半端で、患者を惑わせるだけのデータにしか思えない。
危ない患者に手を出すな
新聞を見てすぐに本棚から取り出したのが、里見清一著「偽善の医療」(新潮新書)。中にこんなくだりがある。
「術後五年生存率を高くするもっとも確実な方法は、危ない患者に手を出さないことである。早期癌ばかり治療していれば、治る可能性は自然高くなるし、仮にそうでないにしても、再発しても早期癌が進行癌になって死ぬまでの期間が五年を超えていれば、五年生存としてはOKだったものとして勘定される。このようなケースまで込みで計算しても意味はない。」
また、「癌になる人の多くは高齢者であって、合併症すなわち余病を多く抱えている。こういう余病が多い人ほど成績の『足を引っ張る』のは当然である。」ため、仮に総合病院で糖尿病の治療を受けているがん患者が、国公立のがんセンターに手術を希望しに行っても体よく断られ、もとの病院で手術をすることになるそうだ。「見かけ上どちらの成績がよくなるか、自明であろう。」
5年生存率がいいという意味
里見医師は長らくがんセンターに勤めて内部を熟知しているだけに、その裏側を容赦ない筆致で(でもユーモアにくるんで)晒してくれる。私は里見医師の新書は4冊しか持っておらず、その全部で近藤誠医師を批判している個所があるのはちょっと辛いけれど、批判を恐れず現行の医療や保険制度の矛盾、問題点を鋭く突いた文章は、快刀乱麻を断つごとき痛快さで、いつも感服しながら読んでいる。
「だから結局、五年生存率がよいというだけでは、真にいい治療をしているのか、単にいい患者だけを扱っているのか、全く判断がつかない。そんなものは目安にもならない。」そうです。
2017年9月19日(火曜)
〇体重 48.7 〇BMI 18.4 〇体脂肪率 25.8
■朝
豆乳、野菜ジュース
■お昼
カレーうどん(乾麺80グラム。玉ネギ、人参、シメジ、イカ。ネギ、カニかまぼこ)、シイタケとちりめんのアヒージョ(マジックソルト、ニンニクオイル)、豆腐とゴーヤー(削り節、甘味噌、一味唐辛子)
■お八つ
チョコ菓子、コーヒー
■夕飯
焼きビーフン(玉ネギ、人参、シメジ、小松菜、ちくわ)、ワンタンスープ(ネギ、オクラ)、サツマイモのレモン煮(ブロッコリー)
コメント
肺がんは発見時のステージが1と4が多いんですね。
私も国立がんセンターで糖尿病のある患者は診てもらえないと知った時に違和感を持ちました。糖尿病は発ガンリスクが高いと聞いてたので、国立ガン”研究”センターだったら、ますます研究対象じゃないのか!?と思ったからです。
統計とか数字というものは気をつけて見ないと、いかにも信憑性がありそうで騙されますね。
病院が治癒率の数字を上げたくて、治りそうな患者しか見ないとしたら問題ですし、余病のある患者を体よく断るのも、人間は機械のパーツでできているのじゃないのだから、なんとも腑に落ちません。
>糖尿病は発ガンリスクが高いと聞いてたので、
そうなんですか! 知りませんでした。確かに父も糖尿病で肺がんでした。
そういえば昨日、糖尿病を疑われる成人が1000万人に上がったというニュースがありましたが、今後、糖尿病でがんの高齢者はますます増えていくはず。
tontonさんの書かれた通り、がんセンターにはもっと研究に力を入れてほしいですよね。
ただ生活習慣由来(食べ過ぎ、運動不足)の糖尿病患者を減らすのが先決かも。国の医療費のコストが増すばかりと、里見医師の「医学の勝利が国家を滅ぼす」にも(確か)あったと思いますし。