「がんとともに歩む力を」

がんの相談支援施設

10月21日(土)に放送されたETV特集「がんとともに歩む力を」(NHK Eテレ)を見ました。

東京・江東区豊洲に昨年2016年10月、NPOが開設したがんの相談支援施設「マギーズ東京」に集う人々を描いた1時間のドキュメンタリー。

がん専門の看護師や心理療法士が在駐し、がん患者や家族の話を聞いたり相談に乗ってくれる(基本的には傾聴というスタイル)。

施設の内部は木材をふんだんに使った温かみのある空間で、大小のテーブルやソファ、椅子がゆったりと配置され、知り合いの家のリビングのようなくつろげる雰囲気。

患者さんは何人か登場するが、病名が出るのは5人。乳がんの女性。乳がんと卵巣がんの女性。子宮頸がんの母親(A子さん)と小児がんの3歳の息子。腺様のう胞癌の男性(Bさん)。小腸がんの男性(Cさん)。肺がんの患者はいなかった。

ほかにすい臓がんの母親を亡くして悲観に暮れる女性、京都の病院の消化器外科の男性医師(患者支援の方法を模索している)も登場。遺族や医療関係者ら多様な人が利用していることが分かる。

母子でがん

・A子さんは息子を出産後、子宮頸がんが発覚し、手術と抗がん剤を受け現在は経過観察中。平行して息子が神経内分泌がんのステージ4と診断されるが、本人(息子)は元気なため無治療で来た。しかし腫瘍はゆっくりと増大、抗がん剤治療を決意する。

「やるにしろやらないにしろ勇気が要る。自分たち(夫婦)の選択が合っているのか分からないが、決めなければいけない」の言葉に大きく頷いた。がんはいろいろな選択、判断を矢継ぎ早に迫ってくる病だ。まして子供の生死を左右するかもしれない決断を下すのがどれほど苦渋に満ちたことなのか、察するにあまりある。

・少し話は逸れるが、この番組、作りが独特で、ナレーションはなくテロップと出演者(患者や家族、施設のスタッフ)の言葉だけで淡々と場面をつないでいく。ナレーションで説明しようとする番組が多い中、新鮮に感じたが、逆に考えると出演者をかなり選びそうだ(語彙が少なく表現力に乏しい出演者ばかりだと説明不足に陥り、制作意図が伝わらないため)。

その点、饒舌で適確な言葉遣いをするA子さんは理想的な出演者ということなのか、出番が多かった(A子さん家族だけの特番を作ってほしいくらい)。

神頼み、食事療法、温泉

・Bさんは顎下腺にできた希少がんで手術も抗がん剤もできない。代替療法を考えるが、効果が証明されていないことや高額なことを思うと手を出す気になれない。ただ何もせずにいることにも耐えられず、「神頼み、食事療法、温泉」で、がんと共存して生きる道を選ぶ。

地蔵の姿が描かれた紙片(がん封じの護符?)を飲んだり、アルコールは摂取せず、肉はトリとレバー以外食べなかったり、温泉へ湯治に出かけたり。山梨県北杜市にある温泉はがんの発生を抑えると謳っているが証明はされていない。しかしBさんはそれも承知の上だ。

手をこまねいているだけの辛さはよく分かるので、「自分が信じたものを納得してやって、効果があればそれでいい」という言葉に共感した。

・Cさんも希少がんの小腸がんで腹膜播種のあるステージ4。昨年末に余命11カ月と診断されるが、病人には見えず、むしろ元気そう。ただずっと仕事人間だったのが、告知後は家族との時間を大切にするようになり、妻と幼い2人の娘たちとよく旅行に出るようになったという。

・がんと診断されたあと、多くの人はそれを自身のこととして受け入れるまでに時間がかかるという。その意味で番組に登場した患者さんたちは、いわゆる「死の受容のプロセス」(否認、怒り、取引、抑うつ、受容の5段階)の「受容」まで到達できた人たちなのかもしれないと、画面の中の穏やかな表情を見て思った(「死」ではなく「がん」の受容ですが)。

マギーズ東京

・全国のがん拠点病院には患者や家族の相談を受け付けるために相談支援センターが設置されているが、利用率はわずか7.7%だそうだ。そういえば私も最初にかかったC病院で相談支援センターを訪ねたことがあるが、印象が悪くて二度と利用したくないと思ったのを思い出した。→(「2015年8月-21 がん拠点病院と相談支援センター」)

もっと血の通った人間味にあふれた施設をということで作られたのがマギーズ東京のようだ。

・マギーズ東京は、イギリスで始まったがん患者への支援の新しい形を日本で初めて導入した施設で、今年4月18日にも「ハートネットTV」(Eテレ)で「がんと共に歩む力を」というタイトルで放送されたそうだ。今回の番組は、それの続編なのかも。

・相談時間は平日の10〜16時。オープンから1年で利用者は6000人ということなので、月に500人、一日20人強が利用している計算。ただフルタイムで仕事をしている人は時間的に利用が難しいかもしれない。

また、こういう施設は立地が大切だが(アクセスが悪いと患者は行ってみようという気になれない)、豊洲市場の近くのようなので交通の便はいいのだろうか。A子さんは近所に住んでいるようで自転車で通っていたが、ほかの人はどうなんだろう。

・施設の建築費や運営費は、活動に賛同した市民や団体からの寄附で全額まかなわれているそうだ。維持は大変だと思うが、がん患者と家族のために大いに役立つ施設として認知され、その先駆け、成功例として活動が全国に広まるといい(名古屋にもできてほしい)。

※10月26日(木)、11月16日(木)それぞれ午前0時からEテレで再放送。

2017年10月23日(月曜)

〇体重 49.5 〇BMI 18.7 〇体脂肪率 26.2

■朝

豆乳、野菜ジュース

■お昼

うどん(乾麺80グラム。干しシイタケ、ワカメ、ねぎ、カニかまぼこ、天かす)、エリンギとちりめんのアヒージョ(マジックソルト、ニンニクオイル)、大根とコンニャクの煮物、サツマイモのレモン煮とブロッコリー

■お八つ

飴、コーヒー

■夕飯

天津飯(卵2個、ネギ、タケノコ、エビ)、ワンタンスープ(エリンギ、タケノコ、セロリの葉)、叩きゴボウと人参のきんぴら(白ごま)、キュウリとカニかまぼこ(甘味噌)

※天津飯の具材は3食分まとめて炒めました。あとは卵に混ぜて焼くだけ。あんはその都度作りますが、これもまとめて作っておいてレンジで温めるだけとなったら楽だろうなー。

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コメント

  1. tonton より:

    >ナレーションで説明しようとする番組が多い中、新鮮に感じたが、逆に考えると出演者をかなり選びそうだ

    私もこの番組みました。
    Aさん初め、(変な言い方ですが)なかなか個性的な出演者で見ごたえがあり、この出演者だからナレーションが必要なかったのかもしれませんね。
    Cさんの(車の中でずっと歌ってる)娘といい、ドキュメンタリー制作者と信頼関係ができてるのか、皆さん自然体でしたね。

    昨年のキャンサーフォーラムでマギーズの代表の女性がパネラーで出ていて(TVには出ていませんでした)、その時から一度行ってみようと思いつつ実際には行ってなかったのですが、TVで雰囲気が分かったので良かったです。

    • クロエサト より:

      >Aさん初め、(変な言い方ですが)なかなか個性的な出演者で見ごたえがあり、

      がん患者としてテレビに出てもいいという人はまだ少数だと思うのですが、A子さんの息子とBさん、Cさんは希少がんなので、こういうがんもあるんだということを世間に知ってもらいたいという思いもあって取材を受けたのかもしれないと、あとから思いました(振り返るとがん種が偏っていて変でしたよね。取材の人選は難しかっただろうと思います)。
      また、「死の受容のプロセス」で否認、怒り、取引、抑うつ段階にある人は、きっとテレビ取材を受ける気にはなれないはず。その意味でがんを受容したA〜Cさんたちは、きれいごとじゃない本音を自然体で話していたと感じました(どこか達観している感じ。ある意味確かに「個性的」です)。

      >ドキュメンタリー制作者と信頼関係ができてるのか、皆さん自然体でしたね。

      時間をかけて丁寧に作られている印象でした。こういう番組が増えると、がんというのは誰でもなり得る身近な病気として世間に認知されると思います。

      >その時から一度行ってみようと思いつつ実際には行ってなかったのですが、

      番組のせいで訪れる人が増えるかもしれませんね。私も近くにあったら行ってみたい! tontonさん、もし行かれたなら是非ブログで感想を書いて下さいね(笑)。

  2. Cさん より:

    非常に恥ずかしいですがCさんです。

    取材は丁寧で、スタッフは取材中も色々考えていました。その姿勢は共感できたので自宅周辺での撮影も了承しました。
    希少がんだからってのはあまり考えてませんでしたが、結果的には確かに偏ってましたね。
    キューブラーロスの受容については、僕はその先がある気がしててそれを模索中です。

    ついでなので、一つ娘の歌の裏話を。
    あれはXの紅ですが、YOSHIKIは10歳で父親を亡くしています。
    「紅に染まったこの俺を慰める奴はもういない」
    僕の解釈ですが、あれは遺された子供の歌です。YOSHIKIの最近のインタビューを見ていて、親を亡くした事を音楽によって受容できるようになった感じがあります。YOSHIKIが音楽を始めたのは父親の影響と言っていますが、10年でその後の人生の指針を提供できた父親への憧れがあります。
    その気持ちを込めて、子供達をX教に引きずり込んでいる最中です(^_^;)

    • クロエサト より:

      出演者ご本人からコメントをいただけるとは思ってもおらず焦っております。当事者がどう思われるか考えもせず好き勝手なことばかり書いて、冷汗三斗の思いです。

      あの歌、Cさんの娘さんへの布教の成果だったんですね(笑)。

      >10年でその後の人生の指針を提供できた父親への憧れ

      私はXやその曲にはうとくて気付きませんでしたが、あの歌にはCさんのそんな思いが込められていたんですね。分かる人には分かるはず。
      子供の頃、親に愛されたという充足感は、その後の人生を豊かにしてくれると聞きます。きっと今は娘さんへのかけがえのない贈り物をされているんですね。

      >キューブラーロスの受容については、僕はその先がある気がしててそれを模索中です。

      ロス自身は死が迫ったとき、かなりジタバタしてみっともなかった、みたいなことを読んだことがあります。かえってホッとしました。人はそうそう達観なんてできないし、きっとする必要もないはず。そもそも誰も私にそんなことを求めてないと思うし(笑)。
      できればいつまでも坦坦と、平らかな気持ちを持ち続けたいと願っています。

  3. Cさん より:

    いえいえ、僕は僕自身がどう思っているかより、TVを見たかたが多少でもポジティブに受け取ってもらえればその方が大切だと思います。

    キューブラーロスは本当に最後惜しいんですよね。なんでそっちに行っちゃったかと..
    僕も達観しているように見えるかもしれませんが、24時間365日ポジティブなわけでもないですし、小康状態で自覚症状がないから言えるだけかもしれませんしね。
    まあ、もし達観できたらそれを誰かに伝えて、全員じゃなくても誰かの参考になればいいかなくらいに思っています。

    あと、治療費稼ぐためにまだフルタイムで働いてますけど、元々そこまで仕事人間じゃないですよ。
    単に出世とか気にせずに、おかしいなと思ったら、相手が上司だろうがなんだろうがおかしいと言うようになっただけです。もう生涯年収そんなに変わらないでしょうし、ストレス溜めない事とか、家族と遊ぶ時間の方が大切だというだけです。

    • クロエサト より:

      >僕も達観しているように見えるかもしれませんが、

      パッと見の印象を書いてしまいました。テレビの限られた放送時間だと、どうしても映っている場面に対して強い印象を持ってしまいます(視聴者に予断を与えないため、念入りに編集されていると思いますが)。
      でもご本人にとっては軽々に断じられたようで不愉快に思われますよね。すみません。

      >ストレス溜めない事とか、家族と遊ぶ時間の方が大切だというだけです。

      同感です。それが一番だと思います。先がどうなるか分からないときに、嫌な人に会ったり言いたくないことを言わなければならなかったりすることの苦痛、疲労。
      私も経済的に許すなら好きな仕事だけをしていけたらと思います。

  4. Cさん より:

    度々すみません。
    不快に思ったわけではないです。単に達観したと言えるほど人間ができてないので、恥ずかしいだけですσ(^_^;)

    お金は.. 幸い治療できるくらいはいただいてますが、子供の教育費がいくらかかるのか読めないのが大変なんですよね…

    • クロエサト より:

      こちらこそ気を回しすぎてすみません。
      デリケートな問題なので言葉を選ばなきゃと思っていますが、逆に慎重になりすぎて、言葉足らずで思いが伝わりにくいかなと思うことがあります。難しいです。
      うまい書き方ができずに申しわけありません。