延命治療を考える2冊

久坂部羊『神の手』

久坂部羊『神の手』(NHK出版)は、延命治療と安楽死について描いた医療ミステリー。21歳のがん患者の壮絶な苦しみを見かねて安楽死させた医師が、医療界(医師会、製薬会社)、政界、マスコミなどによる安楽死推進派と反対派の闘いに否応なく巻き込まれていく。

安楽死反対派が企画したテレビ番組がすごい。「安楽死をしなくても、適正な延命治療を施せば、患者は救われる」ことを実証しようと、敗血症性ショックで意識不明となった62歳男性の「公開の延命治療」を放送する。男性はいったん回復するも、再び敗血症が再発。さらに腎機能不全、肝不全に陥るが、反対派の医師たちはとことん治療を進め、患者は全身から出血、浮腫が出てくる。

描写がすさまじい。

「手足は水死体のように腫れた。まぶたは分厚く膨れ、わずかに開いた目にはゼリーのような粘膜が盛り上がり、白目は粘膜出血で真っ赤に染まった。」

「血漿交換で(略)黄疸はわずかに引いたが、その効果は黒緑色の皮膚が灰褐色になった程度で、悲惨さに変わりはなかった。出血傾向はさらに悪化し、鼻血、吐血、眼球出血のほか、耳と乳首からも出血がはじまった。」

「全身からの出血」って具体的にイメージできなかったけど、こんなむごたらしい状態なんですね。

中村仁一・久坂部羊『思い通りの死に方』

これは久坂部医師が新人外科医だったころの実体験のようで、『思い通りの死に方』(幻冬舎新書)にも出てきます。延命治療に消極的な先輩医師に反発し、患者を救いたい一心で濃厚な治療をした結果、

「患者は意識がないまま、体が生きたまま腐っていき、臭いもひどい。(略)不自然な延命治療がいかに人間の尊厳を損ねるかを、心底から痛感しました。」と振り返っている。

『思い通りの死に方』は、中村仁一、久坂部羊の2人の医師の対談集。

中村医師は、『大往生したけりゃ医療と関わるな』(幻冬舎新書)の著者(以前、猫の記事で紹介しています)。特養で多くの末期がんの老人が苦しむことなく亡くなるのを見届けた経験から、過剰な延命治療をやめ、穏やかに死を迎えられる自然死を提唱している。

久坂部羊の小説は、これまで読めば読むほど、既存のがん医療へ疑問符を突きつけていると感じていたが、この対談集は、やっぱりそうだったんだと頷ける内容。『患者よ、がんと闘うな』(文春文庫)の近藤誠医師にも賛同していて、対談の中に近藤誠の名前も出てくる。

近藤医師と中村医師は『どうせ死ぬなら「がん」がいい』(宝島新書)で対談しているので、いつか久坂部医師も交えた3人で鼎談していただきたいものです。

「命が助かる」は「元通りになる」ことではない

さて、『思い通りの死に方』。医師の世界では常識かもしれないけど、素人にとっては驚いたり、意外だったりする情報やエピソードが次々と出てくる。

見出しを引きます。

「親には延命治療するが自分はイヤ」「孤独死は理想的な最期」「人間ドックが保証する健康は『当日限り』」「胃瘻を受けた患者は『ただ死なないだけ』」「努力するほどにマイナスに働く。それががん治療」

私は「全身から出血」した患者さんを目にしたことがないので観念的にしか考えられなかったけど、久坂部医師の具体的な描写を読んで、心底恐ろしくなった。延命治療の先に、最悪こんな悲惨な状態が待っていると知ったら、延命治療を躊躇する人はきっと増えるはず。

どんな治療を選ぶか迫られたとき、どうなる可能性があるのか、結果をシミュレーションできるといいのに(治療を受けなかった場合も含めて)。

中村「ふつうの人は『命が助かる』『一命を取り留める』という言葉を、『元通りになる』と同じ意味で理解しています。『一命を取り留めましたが植物状態になりました』という結果はまったく想定していない。(略)」

久坂部「そうでしょうね。植物状態ならまだ穏やかなほうで、もっと悲惨なことになる可能性はいくらでもある。」(『思い通りの死に方』より)

患者と医師の治療へ対する認識の相違。隔たりが大きすぎて、通訳(翻訳機)がほしいほどです。

2018年11月17日(土曜)

〇体重 51.0 〇BMI 19.3 〇体脂肪率 28.1

■朝

豆乳、野菜ジュース

■お昼

ペンネアラビアータ(乾麺70グラム。ニンニクオイル)、サラダ(ローズレタス、タマネギ、人参、ブロッコリー、柿、アボカド、金時豆、チリメン、オリーブ。岩塩、黒胡椒、オリーブオイル、バルサミコビネガー)

※ローズレタスは愛知県産。柔らかくてあっさりしています。

■お八つ

コーヒー、飴、クラッカー

■夕飯

雑穀入りご飯(100グラム)、味噌汁(ワカメ、マイタケ、ネギ)、ブリのカレー粉焼き(ピーマン)、根菜の煮物(ゴボウ、人参、タケノコ、コンニャク、練り物、昆布、ゆで卵)、サラダ(キュウリ、パプリカ、リンゴ。甘酢)、梅干し、海苔

2018年11月18日(日曜)

〇体重 50.9 〇BMI 19.3 〇体脂肪率 27.9

■朝

豆乳、野菜ジュース

■お昼

うどん(乾麺80グラム。干しシイタケ、ワカメ、チクワ、ネギ、天かす)、ブナピーとチリメンのアヒージョ(ニンニクオイル)、ほうれん草のおひたし(削り節)、サツマイモのレモン煮、キムチ納豆(ネギ)

■お八つ

コーヒー、飴

■夕飯

お茶漬け(雑穀入りご飯100グラム)、ブリの照り焼き(ピーマン)、根菜の煮物(ゴボウ、人参、タケノコ、コンニャク、練り物、昆布)、ブロッコリーとカニカマ(甘酢)、梅干し

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コメント

  1. tonton より:

    久坂部羊氏の作品は現役医師だけに、描写がリアルで恐ろしいですね。
    下手なホラーよりよっぽど怖いです。

    >「ふつうの人は『命が助かる』『一命を取り留める』という言葉を、『元通りになる』と同じ意味で理解しています。

    ええ、私もなんとなくそう思い込んでました。ちょっと考えれば、よくある脳梗塞等の後遺症でも「元通り」でない例がゴマンとあるのに…なぜなんでしょうね。

    >「努力するほどにマイナスに働く。それががん治療」

    これも多くの医師が言わないことですね。
    でも必ず抗がん剤専門医からは(それなりに)説得力のある反論があり、結局専門家の間でも意見の別れる複雑さがあるのだと思います。
    だからこそ、患者の側にも知識と、自分の中での線引きが必要なんでしょうね。

    >『どうせ死ぬなら「がん」がいい』

    あ、こんな本があるんですか?最近長生きしすぎる親たちを見て、認知症になる前にガンで死ぬのって悪くないな〜と思い始めてるところです。

    • クロエサト より:

      「治る」というのも、「元通りの生活に戻れる」ことだと思いがち。
      50にも60にも70にも80にも90にもなって、若い頃と同じような体力、気力で生活できると思っているのは図々しいようです。
      あらゆる不調やがんも老化だと思えば、無理に抗うのは間違っていると。

      近藤医師も中村医師も久坂部医師も健診、がん検診は受けていないそうです(医師にはそういう人が多い)。がんは末期になってから見つかって、治療で苦しむことなく死にたい、ということだそう。

      すでに2度も治療を受けている私は、一体どうしたらいいんでしょう。
      まぁ「ばち指」という症状が消えただけでもありがたいのですが。