9月14日。E病院の放射線科でセカンドオピニオン(私にとってはサードオピニオン)。
E病院は地下鉄を一度乗り換えて、自宅から30分ぐらい。駅から近いのがありがたい。
E病院の放射線科も地下にあったが、C病院と比べて明るく風通しのいい雰囲気。人の行き来が多いせいかもしれない。受付をすませて、診察室に呼ばれる。
入って、絶句。診療科長の後ろに医学部の学生が8人ぐらい控えている。学生が同席するとは聞いていたが、こんなに大勢とは(診療科長は大きなテディベアのような温かみを感じる人だったので、今後はテディ先生と呼びます)。
体重が半年で5%下がるかどうかが肺がんの指標の一つ
録音の許可を得て、まずは学生からの質問に答える。
肺がんが見つかるまでの経緯、現在の症状、私や家族のこれまでの病歴、現在受けている治療、飲んでいる薬の有無、アレルギーの有無、嗜好品(たばこや酒)の頻度等々。
そして、C病院で肺腺がんステージ1と診断されて手術を勧められたが、放射線治療を受けたくて、近藤誠セカンドオピニオン外来へ意見を聞きに行ったこと。その後、がん患者のサポート組織でE病院の放射線科の治療成績が高いことを知り、こちらへサードオピニオンを受けに来たこと。
ばち指の症状があると告げると、学生がわっと近づいてきて、口々に「ほんとですね」「珍しい」。ちょっと照れる。改めて稀有な症状だったんだと自覚する。
補足として、テディ先生から体重の増減を聞かれ、
「確か去年の春が53キロ、今が48キロ、半年前が50キロぐらい」
と答えると、
「肺がんの場合、体重の変化が一つの指標です。半年間で5%下がるかどうかが一つの目安」
とのこと。あとで計算してみよう。
事前にC病院放射線科の上級先生からの紹介状と検査データの入ったCD-Rを渡していたが、画像が出るまでに少し時間がかかるということで、その間、テディ先生から近藤誠医師についての話が。
「(学生に向かって)近藤誠先生って知ってる?」
「・・・(全員知らない様子)」
「慶応大学病院の放射線科の先生で、非常に独特な理論を持っている人。一部当たっているところもあるが、ちょっと極端すぎるところもある。がんと闘うな、何もするなという。がんもどきといって、がんと診断が付いても、ほっておいても悪いことはしないと」
「肺がんでもGGO、すりガラス陰影のがんは放置して5年してもゆっくりとしか転移しないということは確かにある。(このあたりでモニターに画像が映し出される)でもこれは経過やCTからして明らか。さすがの近藤先生も(治療を)したほうがいいかもしれないと言っている」
近藤医師を否定しない医師に会ったのは、テディ先生が初めてだった。頭ごなしに否定されたら辛いなぁと思っていたので、(全面的に肯けるものではないが)テディ先生の言葉にほっとした。
T2なら1回の放射線治療で完治するのは60%台
話の主な内容(学生への説明も含みます)。
「経過と画像からすれば、絶対治療したほうがいい。治療は手術か放射線になると思う。放射線のほかに粒子線治療がある」
–C病院の呼吸器内科でも陽子線治療を勧められたが、予算的に無理。
「保険が利かなくて288万かかる。(民間の保険で)先進医療特約とかに入っていないか」
–入っていない。
「手術と放射線なら(国の)健康保険診療の範囲内でできる」
「定位放射線治療の治療成績は、腫瘍が2センチ以下なら手術と同程度。3センチを超えると、E病院の場合、治る確率は8割弱。ただ、原発巣が治っても、あとでリンパ腺や他臓器に転移する場合もある」
「1回の照射で完治する確率は60%台」
「手術なら上葉切除だが、やはり再発の可能性がある。PETには写らないようなリンパ腺への転移があった場合、肺門部のリンパ腺を調べて郭清する(切除。切り取る)こともできる。そのため、腫瘍が3センチを超える場合、手術のほうが有利かも」
「ただ、手術は傷口が痛む人がいる。楽なのは圧倒的に放射線」
開胸手術か胸腔鏡下手術か、それとも放射線治療か
–胸腔鏡下手術を勧められているが。
「(意外な様子で)勧められているんですか? T2(腫瘍の最大径が3〜5センチ)なので開胸手術かと思った。僕が話したのは、葉切(ようせつ)、肺葉切除という手術。肺活量が減ることがある」
「胸腔鏡下手術は部分切除、区域切除のため、傷の痛みはおそらく少ないと思う。ただ、肺は結構残る代わりに、肺の元の場所に再発する確率が高くなる」
「楽でメリットがあるのは、やはり胸腔鏡下手術より放射線。入院せず外来だけですむ」
–やはり心配なのは、再発。
「1回目の放射線治療後に再発しても、救済方法はある。2回目の放射線で治った人もいるし、2回目はあきらめて手術した人も」
「手術と放射線治療を最終的に5年生存率、10年生存率で比べたら、それほど大きな差はないかもしれない」
「以上のことを総合的に判断して、(手術か放射線か)自分で選んでください」
とテディ先生。
ああ、近藤医師からも同じことを言われた。選択するのは自分。間違った道を選んだとしても、自分で責任を負わなければならない。でも、誰かに選んでもらって後悔するよりは、自分で選びたい。自分の人生だ。誰かに肩代わりしてもらうことはできない。
※すりガラス陰影のがん(GGO)とは、レントゲンでは写らず、CTでのみボーッとしたすりガラス状の白い影が写し出されるもの。近藤誠著「がん放置療法のすすめ」(文春新書)にも、「すりガラス状陰影の肺がんの多くは、何らかの炎症反応ないし(肺胞の)慢性反応であり、仮に生検で『腺がん』と診断されても、転移する力がないと考えられます。(略)実際にも、すりガラス状陰影の肺がんが転移し亡くなった患者はいないようです。」とある。
※粒子線治療 国内には陽子線治療施設が12か所、重粒子線治療施設が5か所ある。リストはこちら。「日本の粒子線治療施設の紹介」
※C病院の上級先生から陽子線治療を勧められたときの話はこちら。「2015年8月-5 (12日-2)私、問題患者だったの?-担当医を変えられる」
医師は、先端治療も選択肢の一つにあることを患者に説明しないといけないルールがあるのかもしれません。
コメント
はじめまして。名古屋に住む49歳です。(女性・猫飼ってます^^)
先月、CTで肺に7ミリのすりガラス状のものがみつかり、先日PETを撮り
今週N区のN病院へ初診でかかります。
(小さいこともあり、レントゲンでは写らず、PETも反応なし)
前の病院ですでに手術ですねーと言われているのですが、手術はいやだなーと
思っているので、こちらの記事を読み、ひとまずホッとしました。
ぜひ参考にさせてください。
どうぞよろしくおねがいします。
はじめまして。肺がんかもしれないという診断、さぞ不安に思われていることと思います。
N区のN病院。どっちの区かな。私が逃げ出した病院かも・・・(笑)。
最近はネットでも、すりガラス陰影はがんじゃないことが多いという情報をよく見ます。
腫瘍の大きさも小さいし、経過観察を続けることを勧められるかもしれませんね。
もし強引に手術へ誘導されそうになったら、セカンドオピニオンを求めるのも手だと思います。
要するに治療法は一つじゃない。
しょうこさんが納得できる治療(治療しないという選択肢を含めて)を選ぶことができるように願っています。
こんにちは。ご返信ありがとうございます。クロエサトさんの温かい言葉に救われました^^
N病院行ってきました。すりガラス状と思っていたのですが、一部分、濃い部分が
あるとかで、それが転移しやすい性質があると言われました。
そして手術が第一と言われたので「放射線は?」と聞いたら「体も元気で、腫瘍がこんな小さいから手術すれば治るのに、治る確率の下がる放射線をする人はいない」と半分呆れたように言われましたが、なるべく臓器は切りたくありません。
市大病院にセカンドオピニオンをお願いしてみようと思います。
また相談させてください!^^
こんにちは。
>一部分、濃い部分が
また、心配ですね。セカンドオピニオンを受けるまで、なかなか落ち着かない気分だと思います。
私はサードオピニオンを受診できるまで結構日数がかかって、悶々としていたことを思い出しました。
さて、私は定位放射線治療後、結局リンパ節への転移が見つかり、再度放射線治療しています。自分で選んだ治療なので後悔はありませんが、ほかの患者さんに勧めるつもりはありません。
というのも、がんは個別性が高いから。人によって病状や進行が全く違うからです。
もちろんしょうこさんもよく分かっていらっしゃると思いますが、複数の医師からしっかりと説明を聞かれた上で、ご自分の納得される治療を受けられるといいですね。