「スリー・ビルボード」〜警察署長の自殺

映画「スリー・ビルボード」(マーティン・マクドナー監督。2017年)を見ました(レンタルDVD)。

娘をレイプされた上に焼き殺された母親ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)が、犯人をなかなか見つけてくれない警察に業を煮やし、警察署長を挑発する3枚の広告看板を道路沿いに出す。

舞台はアメリカ南部の小さな町。住民全てが顔見知りのような田舎で、この看板が住民たちに波乱を巻き起こす。

末期のすい臓がん

警察署長は住民から敬愛され、妻と幼い二人の娘と幸せに暮らしているが、末期のすい臓がんで余命幾ばくもないという設定。でもその割に、痩せてもいないし黄疸も出ておらず、検査は受けているが治療をしている様子はない。進行がんだから治療法がないのか。でも仕事はしているし、ホントに末期? と首をかしげてしまった。

しかしミルドレッドを尋問中、いきなり吐血。死が近いことを悟った署長は、自宅でピストル自殺してしまう。頭に「袋は取るな。通報しろ」と書いた黒い袋をかぶり、飛び散った脳に妻がショックを受けないようにと、最後まで心を配って。

妻への遺書には、「君は腹を立て、俺を恨むかもしれないが、やめてくれ。これは絶望や孤独の末の決断ではないから。闘病生活のほうが勇気が要る。残された数カ月は君との時間。君と朝を迎え、娘たちと遊べても、苦しむ俺を見て、君は心を痛めるだろう。俺の身体は弱り、君は看病に追われ、それが最後の思い出になる。それは嫌だ。」と妻を思う心情が綴られていた。

三通の遺書

署長は筆まめで、ミルドレッドと部下の警官(サム・ロックウェル)にも遺書を残していた(この二人がアカデミー賞の主演女優賞、助演男優賞を取っています)。

看板のせいで町の住人たちから疎まれるようになっていたミルドレッドへは、犯人をつかまえられず申し訳なかったと詫び、「検討を祈る」と励ます。

部下の警官は、レイシストでエキセントリックで暴力的な同性愛者。心酔する署長に反発するミルドレッドを憎み、何をしでかすか分からず危なっかしい。署長は彼が心配で、遺書で「お前はいい人間だ」と改心するよう諭す。

署長、何ていい人! 彼の死により、それまで主人公たちの心に黒く淀んでいた確執が消えてなくなり、浄化されるよう。でも大団円とはなりませんが。

なぜ死に急ぐ

しかし署長が死に急ぐ必要はあったのか。

すい臓がんの末期というと、スティーブ・ジョブスやジャーナリストの竹田圭吾のやせ細った姿が目に浮かぶ。そういうイメージがあるものだから、タフガイの署長が1回の吐血だけで死を決意したことが腑に落ちない。がんの進行には個人差があるし、4期といえども5年生存率は0%ではない。

彼が死んでから物語は大きく動くので、話の展開上必要だったのかもしれないが、妻の気持ちを思うとどうにも引っかかってしまう。

夫は、「残された家族に迷惑をかけたくない。自分の思い出はきれいなものだけ残したい」。

でも妻としては、「何にもしてあげられなかった。分かってあげられなかった」と後悔することになりはしないか。

署長が自ら死を選んだのは、彼の美学か、優しさか。でも独善的で、身勝手ではないか。

衝動的な自殺だったのか

署長は妻と愛を交わした日の夜、自らの頭を撃ち抜く。熟考を重ねた末の自殺だったと思うが、その割に死の直前に書いた遺書は、推敲もせずに封をする。妻への最後の手紙なんだから、言葉を選び抜いて書くべきではないかと思うので、ササーッとペンを走らせる様子に違和感を持った。

また、下世話な話になるが、残された妻子はどうやって食べていくのか。殉職なら何かしらの一時金が出そうだが自殺はどうか。そしてアメリカの警察に年金制度はあるのだろうか。

用意周到な署長のこと、死亡保障の手厚い生命保険に入るなどして、妻子が暮らしていくのに十分な金銭を残していると思いたいが、実際は分からない(別に財産があったかもしれないが)。

自殺は以前から考えていたが、ようやく決行する日が来た、ということなのか。

若い妻のために?

自殺の理由をいろいろ考えていたが、夫婦の年齢差が可能性として一番高いかもしれないと思うようになった。

署長を演じたウディ・ハレルソンは映画の公開当時で55歳。映画もそれぐらいの設定だと思う。しかし妻はそれより20歳ほど若く30代半ば。娘たちは就学前後くらい。署長にとっては遅い結婚だが、彼は再婚だったのかもしれないし、二人は年の差なんて何のその! の熱烈な恋愛の末に結ばれたのか分からないが、いずれにしろ二人が連れ添ったのは10年くらいだろう。

そのため、署長はそんな若い妻に自分を看病させたくなかった。病でやつれていく格好悪い自分を見せたくなかった。そんな妻への遠慮、引け目があって、介護をしてもらうのに二の足を踏んだ、のではないか。それが愛だと言われれば、それまでですが。

ただ、これが30年40年連れ添った同世代の妻だったら、夫は妻の負担を思いやって自殺するだろうか、という疑問は残る。

がん患者の署長の自殺はストーリーの本筋ではないけれど、がんサバイバーとしてはどうしたって立ち止まざるを得ないのでした。

2018年7月11日(水曜)

〇体重 50.7 〇BMI 19.2 〇体脂肪率 26.5

■朝

豆乳、野菜ジュース

■お昼

冷やしうどん(乾麺80グラム。干しシイタケ、カイワレ、ミョウガ、チクワ)、シメジとちりめんのアヒージョ(ニンニクオイル)、オクラとパプリカの甘酢和え

■お八つ

アイスコーヒー

■夕飯

雑穀入りご飯(100グラム)、味噌汁(サツマイモ、油揚げ、ネギ、卵)、天ぷら(アジ、ピーマン、シイタケ。サニーレタス)、ゴボウと人参のきんぴら(白ごま)

※昼と夜でキノコ食べすぎかも。

2018年7月12日(木曜)

〇体重 50.7 〇BMI 19.2 〇体脂肪率 27.3

■朝

豆乳、野菜ジュース

■お昼

ざるうどん(乾麺80グラム。ミョウガ、ネギ)、焼きもの(タマネギ、人参、サツマイモ、シメジ、厚揚げ。甘味噌)、ゴボウと人参のきんぴら(白ごま)

■お八つ

アイスコーヒー、飴

■夕飯

雑穀入りご飯100グラム、味噌汁(ワカメ、シイタケ、ホウレンソウ、卵)、天ぷら(アジ、ピーマン、シイタケ。サニーレタス)、大根とコンニャクの煮物

※昨日とほぼ同じメニュー。一人だと、ついつい好きなものばかりになります。

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コメント

  1. tonton より:

    さすがクロエさん、そう言われてみれば、確かになぜ署長は死に急いだのか?映画鑑賞中はそこには全然引っかからず見てしまいました。私もサバイバーなのに…
    年齢差のある夫婦だったので、やはり妻を思いやって、なんでしょうか?若い妻の方が体力あるでしょうに、そこは年増の妻にはしない気遣いなんでしょうか?(ひがみ?)
    そう考えると、映画やドラマの中のガン患者の描き方が色々気になってきますね。

    • クロエサト より:

      >映画やドラマの中のガン患者の描き方が色々気になってきますね。

      そうなんです。以前からがん患者が出てくると、がん種やステージ、症状、どんな治療をどこで受けているのか等々、気になって仕方ないのです。
      だから映画の本筋じゃないところで足を取られて、全体をフラットな視点で見られなくなっている。がんサバイバーの悪癖ですね。

      >年増の妻にはしない気遣いなんでしょうか?(ひがみ?)

      私もそれを思い付いたとき、あまりに底の浅い見方で、ブログに書いていいものかどうか悩みました(笑)。
      でも、ミルドレッドが離婚したDV夫も、19歳の彼女を下にも置かない扱いをしていたので、マクドナー監督は、中年男は若い女に弱いと思っているんですよ、きっと(偏見?)。