先日、肺がんの患者会に出席しました。
患者さんのステージ(病期)は1から3。手術、抗がん剤治療を受けている方がほとんどの中に、緊張した面持ちで自己紹介する40前後の女性が。
「検査が終わって来週ステージが確定します。放射線治療を希望していますが、情報を持っている人に話が聞きたくて来ました」
思わず心の中で叫びました。
「あ、去年の私だ!」
彼女は、肺がんの宣告を受けた頃の私でした。
放射線治療を受けたい。でもどこがいい? 経験した人がいたら教えてほしい・・・。
もしかしたら、彼女や私のように、放射線治療について情報を求めている人は多いのではないか。そんな人の役に少しでも立てたらと思い、このブログを立ち上げることにしました。
がんと宣告を受けただけでショックなのに、それから検査、ステージ確定、治療の選択と、しなければならないこと、決めなければいけないことが矢継ぎ早にやってきます。
できるだけ情報を集めて最適な治療を受けたいと思うのですが(治療を受けないのも選択肢の一つ)、ネットも書籍の情報も玉石混交。
「一体、自分に一番適切な情報はどこにあるの?」
嵐の中に放り込まれて右往左往しているうちに、次の通院日はじき訪れます。
情報の海に溺れそうになって、疲弊した頭では何も決断できなくなり、誰かに「全部任せます。一番いい方法を決めて!」とすがりたくなるほど。
私の場合は、肺がん1期の標準治療である手術を勧める医師に対し、放射線治療を受けたいと言い続けたせいか、いい顔をされませんでした。
自分の受けたい治療に辿り着くまでに、足止めをされたり、寄り道をしたりと時間がかかりました。
肺がんの初期で標準治療を選ばなかった人は、どこにいて、どんなことを考え、どんな行動を取ったのだろう・・・。
私がその頃知りたかった、そんな疑問の答えの一つを、ここに残しておきたいと思います。
肺がん1期の5年生存率は70〜90%。
決して低い数字ではありません。
しかしいくら確率が高かろうと、自分が5年後に生きていることを数字が保証してくれるわけではありません。
自分が死んだら0%です。
肺がんサバイバー2年目に入った現在も、咳が出ると肺に再発したのか、頭が痛いと脳に転移したのか、腰が痛むと肝臓か骨に・・・と心が安まるときはありません。
一応2年とか5年、異変がなければ寛解したと見なされるようですが、5年を超えて再発、転移した人も多く、結局、死ぬまでこの心配を抱えていくのだな、それなら一病息災と同じようなものではないか、と思い至るようになりました。
再発や転移への怖れが消えることはありません。
ずっと無病息災でいられたらいいけど、生老病死は人の常、しょせん叶わぬ夢です。
それだったらば、がんもまた一病息災と捉えて、平らかな気持ちで坦々と生きていきたいと願っています。
なお、ブログタイトルの「簡素に暮らす 時々 肺がん」は、日々の暮らしが基本にあって、がんがたまのことであってほしい(年に数回の検査だけであってほしい。つまり再発、転移が起こらないように)という祈りの気持ちを込めて付けたものです。
そのため、がんについて一通り振り返ったあと、普段の暮らしについて綴りたいと思っています。
(ブログを書くのは初めてで、何もかも手探り状態です。至らないところはご容赦ください)
コメント
はじめまして。
肺腺がんで検索してたどりつきました。
色々さかのぼって読ませていただきました。
身近に話せる人がいないのでとても参考になりました。
私は早期?
肺腺がんで来週、手術の予定でしたが、病院で大規模なクラスターが発生し、今は全くの白紙で何もわからない状態になりました。
最初は自分が感染したら、、、との心配でしたが、まさかがんの専門病院でクラスターです。全くおさまらず再開の目途もたってないようです。
コロナがおさまるのを待つ?収まらないですよね。。。その間に進行する、、、入院しても感染リスク。
でも、手術の目標?があったので、何とか不安な気持ちも保っていたのですが、先が見えなくなり、不安でたまらないです。
これも運命?この時期に肺がん。。
クロエさんは手術はされてないのですね。放射線治療だけ、というのも初めて知りました。無知ですみません。
食事も野菜沢山でとても美味しそうです!
痩せてはいけない!を肝の命じて栄養とって待つしかないですね。
とりとめなくてすみません!
これからも楽しみにしています。
pocoさま、初めまして。
お読みいただきありがとうございます。
手術の覚悟を決めたのに延期というのは、自分ではどうしようもないだけに、気持ちの持って行きようがないですよね。
>クロエさんは手術はされてないのですね。放射線治療だけ、というのも初めて知りました。無知ですみません。
全然無知ではありませんよ。知らされていないだけだと思います。
肺がんは最初に呼吸器内科を受診してしまうと、呼吸器外科に送られて手術というケースがほとんどです(手術可能な場合)。
その間、患者は放射線治療という選択肢があることを知らされず、海外では同じステージの肺がんなら放射線で治療するケースが多くても、それも知らされない。
なぜかというと、診療科の力関係で、放射線科は外科に比べて発言力がないから。
これでは患者は置き去りではないか。すごく変な話だと思って、このブログを始めました。
治療法を医者任せにする患者さんが多いのですが、患者に最善の治療法を勧めてくれているのか分からないと思います。
「がん治療で後悔したくない」https://kuroe-sato.com/2020/02/08/post-7869/に書きましたが、病院や医局や医師や、それぞれの事情があって、ベストな治療を勧められない場合もあると思います(現在、新型コロナで医療従事者が大変な時期に悪口みたいなことを書くのは気が引けますが)。
やっぱり患者自身が自分の病をよく知り、自分が納得できる治療法を選ぶことが大切だと思います。
>痩せてはいけない!を肝の命じて栄養とって待つしかないですね。
その通りだと思います。バランスのいい食事で体力を付けて手術に備えてくださいね。
最近の私は栄養を取り過ぎて、いささか体重が増加気味ですが(とほほ)。
すみません、今更、なぜ放射線治療が勧められないの?を読みました。
うーん、本当にびっくりしました。
まさしく、呼吸器内科→呼吸器外科。当然のようにそうなりました。
今、感染症のリスクが高いのに、手術、、、
治療はこれだけと思ってましたので、本を読んで自分の病気を勉強せねば。。
怖くて目をそらしてた部分もあります。
ありがとうございます。
患者会に出ると、「医師に勧められるまま手術したが、痛みがずっと続いている」とか「放射線治療があるなんて知らなかった。知っていたら手術ではなく放射線治療を受けた」という人に会います。
でも、医師の勧める通り手術を受けて、良い経過をたどっている人もたくさんいます。
肺がんについて、治療法について、知れば知るほど、何がベストか分からなくなることもあると思いますが、pocoさんが信頼、納得できる医師と治療法に出会えますように。