映画「アリスのままで」

NHKのBSプレミアムで先月末放送されたアメリカ映画「アリスのままで」(2014年。リチャード・グラツァー監督)を見ました。

50歳の言語学者のアリスが、若年性アルツハイマー病と診断されて徐々に記憶を失っていく物語。アリス役のジュリアン・ムーアはアカデミー賞主演女優賞を受賞。

がんなら良かったのに

急激な記憶力低下のため十分な授業ができず、コロンビア大学を解雇されたアリスが夫に言う。

「がんなら良かった。がんだったら恥ずかしくない。がんならみんなでピンクリボンを付けて、募金活動をするから、感じなくてすむ」

ピンクリボン(乳がん)は象徴でしかないと思うが、患者数の多い病気なら、患者は連絡を取り合ってグループを作り、意見交換をしたり、社会へ要望を出したりできる。

しかし症例の少ない病気はこうはいかない。がんでも肺、胃、大腸、乳がんなど患者数の多いがんならいざしらず、患者数のわずかな希少がんだと、研究者も多くないため治療法が限られていたり、治療できる医師や医療機関も偏っていて、患者は必要な情報をなかなか得ることができず、仲間もおらず、不安だと思う。

がんでなくても症例数の少ない病気の患者は、多くがそういう気持ちを抱くのではないだろうか。誰とも分かち合えない不安と孤独。

片道切符の病気

アリスの夫はがん研究を行っている医師のため、「がんなら良かった」は、ワーカホリックの夫への当てつけも込められていたのかもしれない。

しかしがんサバイバーとしては、このせりふは最初ちょっと不愉快で、次第に複雑な気分になった。

がんサバイバーは治療後の経過が順調でも、転移、再発の可能性への不安は常に頭のどこかに引っかかっている。忘れることはない。「がんなら良かった」はないでしょう。

しかし、アリスのこれからの「経過」は悪化しかない。映画では、彼女のようなタイプのアルツハイマー病が早期発症した場合、教育程度が高い人ほど進行が早いとされている。がん患者のような寛解を望むことはできず、坂道を転がっていくだけ。

それはどんなに恐ろしいことか。

家族の葛藤と絆

アリスは記憶を完全に失う前に、夫に長期休暇を取ってもらって2人だけで過ごそうと提案する。夫はいったんは了解するも、全米一の病院メイヨークリニックから仕事のオファーを受け、家を離れたくないというアリスを置いて一人ミネソタへ旅立ってしまう。

この映画は家族の葛藤の物語でもある。アリスの家族性アルツハイマー病は遺伝するため(アリス自身は父親からの遺伝で発症)、3人の子どもは平静でいられない。

遺伝検査が陽性と分かっても不妊治療で双子を出産する長女。陰性だった医学生の長男。大学へ進学せず演劇に打ち込み、家族と折り合いの悪かった次女は検査を拒否。アリスはこの次女と暮らすことになって、映画は終わる。

がんで良かった

病気の妻より自分のキャリアを優先させる夫といい、まだらボケのようになったアリスに孫を抱かせようとしない長女といい、後味は良くないのだが、エリート一家の中で厄介者だった次女が実は心優しかったという一点だけで救われているようなところがある。

映画の惹句に「家族の絆」とあるが、アリスの病気を通じて家族の絆が強まったようには思えない(いや、アリスを除いた家族─夫と子ども3人の絆は確かに深まったのだけれど)。

自分を自分たらしめているものが失われると、人(家族)は以前のようには接してくれなくなる。それを嘆いていたことも徐々に忘れていく悲しさ。

非道な言葉と自覚して言えば、「(痛みさえなければ)がんは死ぬまで意識がしっかりしている。がんで良かった」(つまらない最低の意趣返しでした)。

2018年9月24日(月曜)

〇体重 50.4 〇BMI 19.1 〇体脂肪率 27.3

■朝

豆乳、野菜ジュース

■お昼

そば(乾麺80グラム。干しシイタケ、ワカメ、ネギ、カマボコ、天かす)、マイタケとブナピーとちりめんのアヒージョ(ニンニクオイル)、だし巻き卵(卵2個。大根おろし)、キュウリとパプリカ(甘酢)

■お八つ

コーヒー、飴。梅干しおにぎり(小1個)

■夕飯

雑穀入りご飯(100グラム)、ワンタンスープ(マイタケ、オクラ)、ニンニクの茎の炒めもの(タマネギ、人参、厚揚げ、ホタテ、魚肉ソーセージ)、ゴボウと人参のきんぴら(白ごま)、リンゴ

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コメント

  1. tonton より:

    私もこの映画は映画館で見たのですが、いまチェックしたら肺がんが分かるちょっと前に観てました。だからか「がんなら…」のセリフは気にも留めなかったのですが、今見たらクロエさんと同じく引っかかると思います。

    >誰とも分かち合えない不安と孤独

    メジャーな病気でも孤独感はあると思います。
    例えば母を見ていると「老いる」ことにも孤独感はあるようです。(母は若い頃からちやほやされて来たので、性格が子供っぽいせいかもしれませんが)

    でも病気を通じてこうして知り合えるのはネット時代のいい面ですね。
    しかしアルツハイマーのように人数は多くても、コミュニケーションを取れなくなる病気というのは不安と孤独が大きいのでしょうね。
    やっぱり私もがんの方がいいなあ。

    • クロエサト より:

      >でも病気を通じてこうして知り合えるのはネット時代のいい面ですね。

      本当に! ブログを通してtontonさんと出会うことができて嬉しゅうございます(笑)。
      肺がん患者さんのブログを見ると、不安なのは自分だけじゃないと気付かされ、気持ちの支えになりますよね。

      渡辺謙主演の「明日の記憶」もそうでしたが、若年性アルツハイマー病を描くとどうしても暗くなってしまう。
      今回の記事は「進行の早い若年性アルツハイマー病の辛さ」「病気を比べたって仕方ない」ということを書くつもりだったのに、筆力がないため違うところに着地してしまいました。あとから手を入れるかもしれません。