映画「マイ・ブックショップ」の原作
昨年DVDで見たイギリス映画「マイ・ブックショップ」が興味深かったので、原作を読んでみました。ペネロピ・フィッツジェラルド著「ブックショップ」(ハーパーコリンズ・ジャパン)。
映画の感想にも書いたけれど(「「輝ける人生」〜60歳になっても恋はできるかもしれないけれど」の下のほう)、救いがない。
主人公フローレンスは亡き夫との約束を守り、オールドハウスと呼ばれる古い建物を買って書店を開くが、彼女を快く思わない町の有力者婦人の陰謀で店を乗っ取られてしまう。
映画では、老紳士や店を手伝ってくれる少女クリスティーンとの心温まるエピソードになぐさめられた。
でも、原作ではフローレンスは老紳士にブラッドベリの本を送ったりしないし、老紳士も彼女に本を注文したりしない。
映画より救いがないが、不思議に明るい
映画では、オールドハウス(店舗兼住居だった)を無一文で追い出されたフローレンスに同情したクリスティーンが、オールドハウスに火を放ち、有力者婦人の鼻を明かしてやろうとする(幾らかなりとも溜飲が下がりました)。しかし原作では何も起こらず、フローレンスは失意のまま町を去る。
読後感は良くありません。でも、不思議な明るさに満ちている。
オールドハウスにはラッパー(叩くもの)という名前のポルターガイストが住み着いていたり、フローレンスはクリスティーンの家で不思議なお酒を勧められる(ペポカボチャの側面に蛇口付きの管を差し込み、蛇口をひねると酒が出てくる。中で発酵しているのでしょうか)。
ちょっとおとぎの国めいています。
良書は生活必需品
フローレンスはナボコフの「ロリータ」を大量に仕入れて書店の窓にディスプレイしたため、物見高い町の住民が店頭に集まってくる。そのため有力者婦人の弁護士から、行列が起きて迷惑だ、飢饉や生活必需品の不足のせいで集まっているならまだしも、という手紙をもらう。フローレンスはこんな返事を書く。
「良書はすぐれた魂にとって貴重な血液となるものであり、来世までも伝えていくために防腐処理を施し、大切に保存しておかねばなりません。故に、当然ながら生活必需品とみなすべきです。」
心を打たれました。良い本というのは心の糧、なくてはならないもの、まさに生活必需品です。
有力者婦人にとって、フローレンスはいわば悪書で、焚書されるべきものだったのかもしれません(映画に出てきたブラッドベリの「華氏451度」はそういう意味だったのでしょうか)。
2020年7月13日(月曜)
〇体重 51.2 〇BMI 19.4 〇体脂肪率 27.9
■朝
豆乳、野菜ジュース
■お昼
天ぷらうどん(乾麺80グラム。かき揚げ、ネギ、かまぼこ)、マイタケとちりめんのアヒージョ(ガーリックオイル)、カボチャの含め煮、キュウリの酢の物(ワカメ、ショウガ)
かき揚げは昨日揚げておいたもの(タマネギ、人参、カボチャ、ちりめん)
■お八つ
コーヒー、飴
■夕飯
雑穀入りご飯100グラム、スープ(人参、カボチャ、ズッキーニ、卵)、麻婆豆腐(豆腐半丁、タケノコ、シメジ、エビ)、ブドウ
お腹が空いていたので、山盛り作ってしまいました
コメント
「マイ・ブックショップ」原作もお読みになったのですね。
>「良書はすぐれた魂にとって貴重な血液となるものであり、〜当然ながら生活必需品とみなすべきです。」
いい言葉ですね。私にとって、過去に読んだ本の中で、魂の血液になった本てなんだろう?考えてみたくなりますね。
映画より救いがないのに、不思議に明るい、と言うのも興味深いです。
今、ちょっと思い出したのは、篠田節子の「弥勒 」です。
もう暗いなんてレベルじゃなく救いがなさすぎて、読み終えてなんだか突き抜けちゃった気分になったことを思い出しました。
海外旅行に行くよりも、家にじっと座ったままで遠くまで行ける。読書って不思議な体験ですね。
tontonさんがブログで「マイ・ブックショップ」のレビューをされていなかったら、私は映画を見ることも、原作本を読むこともなかったと思います。感謝です。
>海外旅行に行くよりも、家にじっと座ったままで遠くまで行ける。読書って不思議な体験ですね。
ほんとにそうですね。私はまた「源氏物語」の現代語訳を読んでいるので、時間をも超越して平安時代をさまよっております(笑)(ドラマ「いいね!光源氏くん」を見てから、「須磨」を読み返したくなって)。
>映画より救いがないのに、不思議に明るい、と言うのも興味深いです。
と書かれているのを見て、桐野夏生の「柔らかな頬」もそうかもしれないと思ったりしました。
篠田節子の「弥勒」は読んでいませんが、ちょっと怖そうかも(残酷なのは苦手で)。稲垣足穂の「弥勒」なら好きなんですが。